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2025.05.28

【第1回】「持続可能な医療」のために(医療とSDGsの関係)

「御社で取り組んでおられるSDGsには、どのようなものがありますか?」

就職活動の場面で、学生さんからそう尋ねられることが、今や珍しいことではなくなりました。
少し前までは、企業の社会貢献といえば「CSR(企業の社会的責任)」という言葉が主流でした。
しかし現在は、「SDGs(持続可能な開発目標)」という具体的な枠組みで、企業や団体が社会とどう向き合っているかが問われる時代になっています。

【第1回】「持続可能な医療」のために(医療とSDGsの関係) ホワイト医療機関認定

そもそも、SDGsって?

SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年に国連で採択された「世界中の誰一人として取り残さない」ための国際的な目標です。
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すために、17のゴールと169のターゲットが定められています。
教育、ジェンダー平等、貧困対策、気候変動、働き方、都市づくり、平和と公正——どれも国や地域を超えた人類共通の課題です。
そしてその中には、「3.すべての人に健康と福祉を」や「8.働きがいも経済成長も」など、医療現場と深く関わる目標も数多く含まれています。
SDGsは、大きな国家や国際機関のものだと思われがちですが、実は私たち一人ひとりの生き方や、日々の現場に直結する目標でもあるのです。

【第1回】「持続可能な医療」のために(医療とSDGsの関係) ホワイト医療機関認定

この連載では、「質の良い医療を持続的に提供できる社会とは何か」を、SDGsの視点から掘り下げていきます。
第1回では医療とSDGsの関係について全体的に見てみながら、第2回以降は医療に関係するSDGs目標ごとにフォーカスし、具体的な事例や課題を交えて紹介していきます。

「持続可能な医療」が単なる理念ではなく、実際の現場にどう活かされるのか。
その先にどんな未来があり、患者さん一人ひとりにどんな意味があるのか。
全7回の連載で語っていきたいと思います。

医療の「持続可能性」とは?

さて、早速第1回のテーマ「医療とSDGsの関係」について考えていきましょう。
「医療が持続可能であること」とは、どういう状態を指すのでしょうか。

「持続可能な医療」とは、簡潔に言えば、「質を保ったまま、無理なく、長く続けていける医療」です。もっと言えば、「その地域で、誰もが安心して必要な医療を受け続けられる状態が、これからもずっと続いていく」ことです。

現実には、少子高齢化、医療従事者の離職、地域格差、患者数の増加など、医療現場を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。
患者さんが病院に行ったとき、適切な人材と設備がそこにある。夜間や休日でも必要な対応が受けられる。
そんな医療提供体制がこのまま維持されていく保証は、実はとても脆いのです。
だからこそ今、医療業界が「持続可能性」という視点を持って運営されていくべき分野となっています。

「持続可能な医療」は誰のため?

医療におけるSDGsは、ただの飾りではありません。
むしろ、医療が「医療」であるために欠かせない視点です。
持続可能な医療体制がなければ、どれほど優れた治療法や設備があっても、それを支える人がいなくなってしまうかもしれません。
そしてそのしわ寄せは、何よりも「患者さん」に向かいます。
医療に関わるすべての取り組みの先には、患者さんの命と暮らしがあります。
持続可能な医療を考えることは、患者さんの「これから」に責任を持つこと。
SDGsは医療従事者にとっても患者さんにとっても、他人事ではない「今この瞬間の話題」なのだと思います。

「持続可能な医療」をつくるためには

では、「持続可能な医療」をつくるためには、どうすればよいのでしょうか。
私は、「人」であると思っています。
次回以降も度々触れていくことになると思いますが、「人」が医療を支えており、そしてそれは、今後も続いていくこと。
「働く人」を大切にする医療社会が、患者さんをより良く長く支えられる未来につながると信じています。

これからの連載について

今回は第1回として、「医療とSDGsの関係」について触れてまいりました。
次回以降は、SDGsの項目に沿って医療の現状と未来についてまとめていきます。
読者の皆さまと一緒に、「医療の未来」について少しずつ考えていけたら嬉しく思います。

日本医療労働環境改善協会(JMWEIA)
岡田 詩穂