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2025.05.21

【第5回】認定基準5つの鍵 (1分単位の残業計算)

さて、最後の認定基準についての回となりました、「ホワイト医療機関認定」の認定基準にスポットを当てる本連載。
第5回は、「1分単位での残業計算をおこなっている」という認定基準から、「働き方の公正さ」を一緒に考えていきたいと思います。

【第5回】認定基準5つの鍵(1分単位の残業計算) ホワイト医療機関認定

認定基準⑤:1分単位での残業計算をおこなっている

「え? まだ帰れないの……?」
そんな言葉が、退勤間際のスタッフルームで漏れることは、珍しくありません。

「定時」という意識

医療現場は、「定時でぴったり終わる」ということが難しい職場です。
患者さんの急変対応、急患の受け入れ、終業後の片付けや書類整理……。
5分、10分、時には30分以上残って作業する日もあるでしょう。
それ自体を「悪」とするのではなく、その時間が「無かったこと」にされていないかどうかが、実はとても大切なのです。

「定額働かせ放題」になっていないか

「15分未満の残業は切り捨て」
「月に一定時間までは残業代がつかない」
「実質サービス残業」
こうした制度や慣習が、医療の現場では、まだ少なからず存在しています。

一方で、「1分単位で残業代が出る」職場では、労働時間が労働時間として正当に評価されているということになります。
これはつまり、「あなたの働きをちゃんと見ていますよ」というメッセージでもあるのです。

お金の問題ではなく「信頼」の問題

「数分の残業代なんて、どうせ大した額じゃないでしょ?」
確かに、そうかもしれません。
しかし、その積み重ねは1年だと大きな差になります。
そして、それ以上に重要なのは、「切り捨てられないこと」です。

たとえば、こんな声があります。
「以前の職場では、「ちょっとくらい」が当たり前で、気づけば毎日30分以上サービス残業。でも、今の職場は、1分単位で残業がつくので、記録することにためらいがなくなりました。「ちゃんと申請していい」って、こんなに働きやすいんだって驚きました」
この声のポイントは、「申請していい空気がある」という点です。
制度があるだけでは不十分で、それを活用できる現場風土があって初めて意味を持ちます。

1分単位の管理は「現場の透明性」も高める

細かく記録されることで、なぜ残業が発生しているのか、どうすれば減らせるのかという分析が可能になります。
残業が特定の曜日や時間帯に集中していないか?
スタッフごとの偏りがないか?
そういった課題に向き合うきっかけにもなり、職場改善に役立ちます。

また、タイムカードや勤怠システムで1分単位の打刻・計算がされている職場では、不正な勤怠操作(いわゆる「サービス残業の強要」)が起きにくくなるメリットもあります。

求職者としてチェックしておきたいこと

「残業代全額支給」という項目を求人票で見かけても、それが何分単位なのかは確認してみないと分かりません。
面接の場や見学時に、こんな風に聞いてみるのがよいでしょう。
「タイムカードや勤怠システムはどのように管理されていますか?」
「残業代は、何分単位で支給されていますか?」
「残業の申請と実際の支給に差が出ることはありますか?」
また、職員インタビューが掲載されている医院サイトがあれば、現場の声を確認するのも一つの方法です。
「残業はあるけれど、そのぶんちゃんと支給されている」という実感があるかどうかは、働きやすさのバロメーターになります。

「きちんと支払われる」ことは、「しっかりと見てくれている」こと

仕事の最後の5分、患者さん対応を引き受けた10分、その後の掃除や記録の15分。
それらが「仕方ないよね」で切り捨てられる職場と、「ありがとう、お疲れさま」と対価が支払われる職場。
同じ医療の現場でも、その1分の扱いは、働く人の気持ちに大きな違いを生みます。
だからこそ、「1分単位での残業計算をおこなっている」という認定基準は、制度の話であると同時に、「人を大切にするかどうか」の姿勢を映す鏡でもあるのです。

最後に

「1分単位での残業計算をおこなっている」ことは、「時間にうるさい」ということではありません。
むしろ、働く人の時間に、正しく敬意を払うということです。
あなたの仕事の一つ一つが、きちんと評価され、報われる場所。
そんな医院と出会うための視点の一つとして、この認定基準を、ぜひ覚えておいてください。

■次回は…
次回はついに最終回!
最終第6回は、これまでスポットを当ててきた認定基準一つ一つを総まとめし、
「ホワイト医療機関認定」がめざす先について語ります。
ぜひ、次回もお会いしましょう!

日本医療労働環境改善協会(JMWEIA)
岡田 詩穂