2025.05.16
さて、「ホワイト医療機関認定」の認定基準にスポットを当てる本連載。
第2回は、「5年連続の昇給実績(常勤職員を対象)」についてお届けします。
「昇給って、どの職場でもあるんじゃないの?」
「長く働いたら、自然に上がるものじゃないの?」
そんなふうに思っていたのに、いざ働き始めてみると、「この数年、基本給がまったく変わっていない…」「昇給の話は聞かないし、言い出しづらい雰囲気…」
こんな経験をした方がいらっしゃるかもしれません。
今回は、「ホワイト医療機関認定」の2つ目の基準、「5年連続の昇給実績(常勤職員を対象)」についてお話ししたいと思います。
まず前提としてお伝えしたいのは、「昇給の有無」は単に自分一人のお給料についての話ではない、ということです。
昇給の背景には、「その医療機関が継続的に利益を出せているか」「その利益を、スタッフにも還元する姿勢があるか」という、経営の「安定性」や「考え方」が、密接に関わっている部分です。
「5年連続で昇給を実施している」という実績は、「ちゃんと収益が出ていて、その中からスタッフの待遇をきちんと見直している」という明確な証になります。
つまり、安定した経営基盤があり、スタッフの頑張りをきちんと見ている。
そんな職場のひとつの証拠ともいえるのです。
「1回くらい昇給があっても、それは偶然かもしれない」
「景気のいい年だけポンと上がった、ということもある」
そうした「偶然」ではなく、「少なくとも5年間、昇給という形でスタッフに継続して報いてきた」という継続性が、認定基準では大切にされています。
継続して昇給させる経営ができているということは、「一時的な好調ではなく、長期的なビジョンと責任ある運営を行っている」という裏付けです。
働く側としては、「来年も昇給があるかもしれない」と思える安心感が得られますし、何より、自分の成長や貢献がちゃんと評価されている実感にもつながっていきます。
昇給は、単に「今月の手取りが少し増える」というだけの話ではありません。
数年先を見据えたとき、その積み重ねは大きな差になります。
ボーナス、退職金、将来受け取る年金、住宅ローンの審査、育児や介護といったライフステージの変化…。
すべてに関わってくるのが「基本給」です。
将来への安心感は、「いま、この職場で働いていていいのかな」という日々の不安を和らげてくれます。
そしてその安心が、患者さんと向き合う余裕や、医療者としての力を発揮する土台にもなっていくのではないでしょうか。
残念ながら、求人票に「昇給あり」と書いてあっても、実際には昇給額や頻度が曖昧だったり、そもそも「実績として続いているかどうか」は分からないことが多いものです。
だからこそ、「ホワイト医療機関認定」では、客観的な実績として「5年連続の昇給」が確認できることを、ひとつの認定基準に据えています。
例えば、これから転職を考えている方にとって、「この職場は、ちゃんと昇給があるんだ」「安定して続いているんだ」という安心材料が、少しでも多くあるに越したことはありません。
この基準が、長く無理なく働ける職場選びのヒントになってくれたらと思っています。
「昇給がある」ということは、「あなたの頑張りを見ているよ」というメッセージかもしれません。
そして「5年連続の昇給実績がある」ということは、その気持ちが「本気で継続している」という証です。
医療の現場で現在働いている方も、これから働こうとしている方も、「どんなふうに働いていける場所なのか」ということを、待遇の裏側から少しだけのぞいてみる。
それも、職場選びの大切な視点のひとつかもしれません。
■次回は…
第3回は、3つ目の基準「年間休日が120日以上ある」についてお届けします。
よければ次もご覧ください!
日本医療労働環境改善協会(JMWEIA)
岡田 詩穂