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2025.05.14

【第1回】認定基準5つの鍵 (厚生年金、健康保険加入)

「ホワイトな医療機関を目指したい」
「しっかりした医療現場で、ちゃんと働きたい」
「安心できるクリニックで治療を受けたい」

そんな思いを持つ方々に知っていただきたい一つの指標が、「ホワイト医療機関認定」です。
5つの基準の達成度によって認定内容が変わるこの認定制度ですが、今回から全6回にわたり、その認定基準それぞれについてスポットを当てたコラムをお届けしたいと思います。

さて、早速、第1回は「厚生年金、健康保険加入」についてです。

【第1回】認定基準5つの鍵(厚生年金、健康保険加入) ホワイト医療機関認定

認定基準①:厚生年金、健康保険加入

求人票に書かれた「社会保険完備」の文字。あるいは「医師国保加入」の表記。
医療従事者として職場を探すとき、ふと目にすることのあるこれらの文言に、疑問を感じたことはありませんか?

「社会保険って、当たり前なんじゃないの?」
「医師国保って、何が違うの?」
「どちらに入っている職場を選ぶべき?」

このコラムでは、「ホワイト医療機関認定」の基準のひとつ「厚生年金と健康保険加入」という視点から、なぜこれが「ホワイト」とされるのか、そして、その背景にはどんな事情があるのかを、ご紹介していきたいと思います。

社会保険・医師国保って?

まず、なぜ「社会保険(いわゆる、厚生年金・健康保険)未加入」の医療機関があるのか、その理由から紐解いていきましょう。

個人経営のクリニックや一部の医療法人では、「医師国保(医療保険)」と「国民年金」の組み合わせにしている場合があります。
「医師国保」は、開業医やその従業員を対象にした国保組合で、通常の国民健康保険よりも保険料が安く、医療費の給付も手厚いという特徴があります。
また、従業員の人数や雇用形態によっては、法律上も社会保険の加入義務がなかったり、曖昧だったりするケースもあり、「ずっとこの形でやってきた」という理由で、そのまま運用されている医院も少なくありません。

特に、開業間もないクリニックや小規模な医院では、保険料の事業主負担が大きいため、「経営的に難しい」「制度が複雑でよく分からない」といった理由から、あえて社会保険に移行していないケースもあります。
つまり、社会保険に加入していないからといって、それだけで「ブラック」とは限りません。
しかし、その一方で、働く側にとって見過ごせない違いがあるのも事実です。

社会保険に加入していることのメリットとは?

では、医師国保と厚生年金・健康保険(社会保険)の違いは、どこにあるのでしょうか。 大きなポイントは、将来の保障と、もしもの時の手当の手厚さにあります。 下の表で整理してみましょう。

制度 社会保険(健康保険+厚生年金) 医師国保+国民年金
保険料負担 事業主と従業員で折半
(=従業員の負担が少ない)
全額自己負担
年金制度 基礎年金に厚生年金が上乗せ
(=将来の年金額が多くなる)
国民年金(=基礎年金)のみ
傷病手当金 あり(病気やケガで働けない期間の所得補償) ないことがある
出産手当金 あり ないことがある

特に注目したいのは「傷病手当金」や「出産手当金」の部分です。
社会保険に加入していれば、病気やけがで休職する場合でも一定の所得補償が得られます。
また、将来受け取る年金額にも大きな差が生まれ、ライフステージに応じた安心感が得られます。

「厚生年金、健康保険加入」は「安心して働いてほしい」の証

厚生年金、健康保険に加入しているということは、経営者側がその分の保険料を負担し、事務手続きを行っているということでもあります。
これは簡単なことではなく、特に中小規模の医院にとっては大きな決断です。
それでも社会保険に加入しているというのは、「ここで長く働いてほしい」「スタッフの生活を守りたい」という医院の気持ちの現れとも言えるでしょう。
だからこそ、「ホワイト医療機関認定」の一項目としても、社会保険の有無は重要視されています。

求職者として、どう見ればいい?

先述したとおり、医師国保を採用している医療機関がすべてブラックというわけではありません。スタッフを大切にしている素晴らしい医院もたくさんあります。
しかし、自分の人生を支える制度として、「厚生年金、健康保険加入があるかどうか」は、やはり見過ごせない要素です。

安心して働き、安心して生活できる場所かどうか――。
そのひとつの目安として、求人票の「社会保険完備」という一文を、ぜひチェックしてみてください。

最後に

「厚生年金、健康保険に加入している」
それは、とても静かなサインかもしれません。
しかし、その裏には、あなたの未来をどう考えているかという医院側の気持ちが、そっと表れています。

今、職場を探している方にとって、少しでも安心できる職場との出会いがありますように。
そんな願いを込めて、今回のコラムをお届けしました。

■次回は…
第2回は、「5年連続の昇給実績(常勤職員を対象)」についてお届けします!

日本医療労働環境改善協会(JMWEIA)
岡田 詩穂