2025.10.15
「ブラック企業」という言葉が広まってから、もう随分と経ちました。
長時間労働や残業代未払い、各種ハラスメント……。
そうした「おかしな働き方」が社会問題になったことで、「これは『当たり前』じゃない」と多くの人が気付きました。
その流れの中で生まれたのが「ホワイト企業」という言葉。
ブラックの反対として、働きやすい会社を指す便利な言葉が、社会に必要だったのでしょう。
ただし、黒か白かの2択しかないのであれば、「黒でないから白」と言えてしまうのです。つまりは、「働きやすさ」にも大きな幅がありました。
法律を守っている、雇用条件通りに休みが取れる、そうした当たり前のことをしっかり行っている企業から、より福利厚生に力を入れているなど、さらに働きやすさを求めた企業まで。
しかし、総じて言えるのは、そうした「当たり前」を保証してくれることが、従業員の定着という企業の基盤を作っているということです。
今の学生や転職希望者が企業に求めるのは、安心して働ける環境です。
「多少つらくても我慢すれば安定しているからいい」という考え方は、もう通用しません。
インターネットやSNSで企業の情報はすぐに広まり、就活生も社会人も会社をしっかり選ぶ時代になりました。
だからこそ「当たり前がきちんとある」ことは、とても大きな意味を持ちます。
例えば、休みがちゃんと取れること、給料がきちんと支払われること、上司に相談できる雰囲気があること、自分のキャリアを積んでいけること…。
これらが「保証されている」と分かるだけで、人は安心できるのです。
逆に、その保証がないと「ここで働いて大丈夫かな」と不安になってしまいます。
たとえば求人票に「完全週休二日」と書かれていても、6連勤がよくある会社だとどうでしょう。求職者はすぐに不信感を抱きます。
逆に「月平均残業時間15時間」「有給取得率80%」といった数字や、実際に時短勤務を利用している社員の声が公開されていると、「本当に働きやすい会社なんだ」と安心できます。_
つまり「ホワイトである」と伝えるためには、根拠が必要なのです。
単に「うちは働きやすいです」と言うだけでは信じてもらえません。
具体的な数字や実例こそが、安心感を生み出すのです。
少子高齢化で労働人口が減っていく中、「ホワイトである」と胸を張って言えない企業は、今後ますます人材確保が難しくなるでしょう。
大企業のように名前で人を集められない中小企業ほど、ホワイトであることをきちんと示す必要があります。
そしてこれは、採用のためだけの取り組みではありません。
社員が安心して働ける環境は、結果的に生産性を高め、離職を減らし、企業そのものを強くします。
ホワイトであることは、単なるイメージ戦略ではなく、経営に直結する「生き残り戦略」なのです。
「ホワイトである」と言えることが「生き残り戦略」であると言いましたが、これは、企業だけがそう主張していては、就活生も本当のことを言っているのか分かりません。
そこで、第三者によって保証された、という事実は、大きな意味を持ちます。
「ホワイト医療機関認定」は、「目に見える働きやすさ」5項目を認定項目として、医療機関の働きやすさに認定を行うものです。
現在、認定項目を満たせている医療機関は、まだ数少ない状態です。
そんな中で、「この認定を取得できた」と表明できることは、「証明」という面でその医療機関の力となります。
結局のところ、ホワイトな職場とは「当たり前を保証してくれる職場」です。
特別なことではありませんが、いまだにその当たり前が守られていない会社があるからこそ、「ホワイトであること」に価値が生まれるのです。
働く人にとっては「ここなら安心して頑張れる」と思えること。
企業にとっては「うちはきちんとやっています」と自信を持って示せること。
その両方がそろって、初めて「ホワイトである」と言えるのではないでしょうか。
これからの時代、ホワイトであることを示せない企業は人材に選ばれず、結果的に生き残っていけません。
逆に、当たり前を積み重ねて保証できる企業は、「ここで働きたい」と言われ続けます。
「ホワイトである」ということは、ただのキャッチコピーではなく、働く人と企業をつなぐ信頼の証なのです。
日本医療労働環境改善協会(JMWEIA)
岡田 詩穂