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2025.09.08

【第2回】売り手市場を勝ち残るために

さて、第1回では現在の医療業界が「売り手市場」であり、優秀な人材確保のためにどの医療機関も苦心しているということをお話ししてきました。
医療機関は今、「選ばれる組織にならなければいけない」局面に立たされています。
第2回では、医療従事者に選ばれる組織とはどのような組織かについて、考えていきたいと思います。

 【第2回】売り手市場を勝ち残るために ホワイト医療機関認定

第2回:選ばれる組織に必要な条件とは

厚生労働省の調査によれば、看護職員の転職希望理由の上位には、「給与への不満」「休暇が取りにくい」「超過勤務が多い」「人間関係がよくない」といった要因が並びます
また、逆に再就職先の決め手となった理由の上位には、「通勤が便利」「希望勤務時間と合致した」「休暇が取りやすい」「給与が希望と合う」「人間関係がよさそう」といったものが並びます。
出産・育児・介護など、様々なライフステージを持つスタッフが入り交じる中で柔軟な勤務体制を整えることは、もはや「福利厚生」ではなく「生き残り戦略」そのものです。

勤務時間の柔軟性

「勤務時間の柔軟性」と題しましたが、医療従事者が求める働き方は、時短勤務をしたい人や、週に何日かで働きたい人、常勤で働きたい人などと、非常に様々です。
また、医療機関は営業時間や夜勤などでどうしても長時間の勤務体制が発生しやすい環境のため、どうしても医院と従事者の条件をすり合わせるのが難しくなります。
また、直結するのは休暇と給与です。
人数がカツカツの状態ではシフトも詰まってしまい、休暇が取り辛くなるでしょう。
また、給与体制は、常勤と非常勤で異なりますし、また、「きちんと昇給するのか」どうかは注目されます。
どのような働き方が可能か、休暇の取り方はどのようになっているか、給与体制はどうなっているか。
このようなポイントを明朗に説明できることが重要です。

成長機会を提供する

次に欠かせないのが「成長できる環境」です。
医療従事者は高度な知識や技術を求められるにも関わらず、現場に出てから「学ぶ余裕がない」と感じる人は少なくありません。
「この職場で成長できるイメージを描けないから」というのも、数年で転職を決意する理由の一つなのです。

判断の基準としては、研修体制や研修サポート制度です。
例えば、自医療機関内での研修や、外部のセミナーなどへの参加費補助などがこれに当たります。
さらに、研修も階層別研修(新規スタッフ、教育担当、主任などの立場別に行う研修のこと)であれば、ステップアップにつながることが明確に示されます。
「ここにいれば数年後にこうなれる」というキャリアデザインモデルが示されれば、スタッフは安心して腰を据えることができます。
逆に「今後どうなるのかな…」と未来が見えない環境では、スタッフは不安を感じ、他の場所に流れて行ってしまいます。

経営層の発信力と透明性

経営層の姿勢は、組織の魅力を大きく左右します。求職者は給与や勤務条件だけでなく、「この職場で働くことに意味を感じられるか」を重視しています。
たとえば、病院のホームページや採用パンフレットに経営者の理念が明確に示されている場合、「この病院は何を大切にしているのか」が一目で伝わります。
経営層が「患者にどのような医療を届けたいのか」「スタッフにどう成長してほしいのか」を一貫して語り続けることは、採用における最大の説得力となります。

最後に

「選ばれる組織」になるためには、基本の徹底と、それを何かしらの形で表に示すことが大切です。
「見える」工夫を一つ一つ積み重ねていくことが、医療機関の魅力を高め、売り手市場を勝ち抜く最大の武器となります。

最終第3回では、こうした条件を具体的に「採用力」と「定着力」へと結びつけるための実践的な戦略を取り上げていきます。

日本医療労働環境改善協会(JMWEIA)
岡田 詩穂