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2025.05.23

医療従事者の離職率を本気で下げるために

「最近また一人、看護師が辞めるらしい」
「技師が3回目の転職先を探してるって」
「新人が夏まで持たないかも」――。
医療機関で日々働く中で、こうした声は決して珍しくないのが現実です。

厚生労働省の調査によると、医療業界の離職率は例年10%前後と、一般企業と比較して特別に高い数字ではないように見えます。
しかし、その中身を覗いてみると、「働きづらさ」「職場の人間関係」「過度な業務負担」が離職の引き金となっていることが分かります。

つまり、医療業界の離職は個人の事情だけでなく、職場の構造的な問題に起因しているケースが多いのです。
だからこそ、医療業界の離職率を下げるには、単なる給与アップや採用強化ではなく、「働き続けたくなる環境」そのものを真剣に見直す必要があります。

医療従事者の離職率を本気で下げるために ホワイト医療機関認定

離職を“減らす”ではなく、“理由をなくす”

離職率を減らしたいと思ったとき、多くの医療機関が「人を増やす」「給料を上げる」「面談を増やす」といった対策を打ち出します。勿論、どれも間違ってはいません。

しかし、こうした取り組みが根本的な解決にならないのは、「なぜ人が辞めているのか」の部分が十分に掘り下げられていないことが多いからです。

例えば、シフトがきついという理由で辞めたスタッフがいたとします。
その人の次に入った人にも同じシフトが割り当てられれば、また同じように辞めてしまうかもしれません。
他にも、「人間関係がしんどい」とこぼして辞めたスタッフのことを教訓に、今後の解決策として研修だけを用意しても、問題の本質に迫れていない場合があります。

つまり、離職率を減らすには「離職理由そのものを潰す」必要があるのです。
そして、そのヒントは、実は「ホワイト医療機関認定」の認定基準にも表れています。

ホワイト医療機関認定とは? 離職対策との関係性

「ホワイト医療機関認定」には、5つの認定基準がありますが、これは全て、目に見えて成果がわかる項目になっています。
これらはすべて、「辞めたくなる理由」のうち、「目に見えるもの」をピックアップし、それを取り除くための取組の成果を示しています。
ホワイト医療機関認定とは、単なる称号ではなく、離職防止を本気で考えた結果、制度として体系化されたひとつの形です。

「スタッフが笑っている」と患者にも伝わる

医療の現場は、日々、命や不安と向き合う緊張感の高い空間です。
そんな中で働くスタッフが心身ともに疲弊していては、どれほど高度な医療技術があっても、患者にとっての安心感は薄れてしまいます。

逆に、スタッフが健やかに働けている環境は、患者にとっても心強いものです。

「先生や看護師さんたちが、なんか楽しそうだった」
「スタッフ同士の雰囲気が良くて、安心できた」

そんな声は、口コミやSNSなどでも度々見られます。

つまり、働く人の環境整備は、患者への信頼にも直結するということ。
離職対策は、医療の質そのものを守るための取り組みなのです。

離職率を下げるという「本気」

離職率を本気で下げるには、「今の環境で続けられる人」を集めるのではなく、「誰もが安心して働き続けられる仕組み」を作ることが不可欠です。

それは、変化と対話を伴う地道な作業であり、時には組織の弱点と向き合う覚悟も必要です。
しかしその先には、現場が笑い、患者が安心し、医療の力が持続していく未来があります。

ホワイト医療機関認定は、その第一歩としての「指標」になり得るのです。

日本医療労働環境改善協会(JMWEIA)
岡田 詩穂